申真衣さん
東京大学卒業後、外資系証券会社に10年勤めた後、2018年にエンターテイメント分野の会社の
事業成長支援、経営管理を行う「GENDA」を共同創業。2019年より同社の代表取締役を務める申真衣さん。
2人の娘を育てながら、「VERY」のカバーモデルも務めている。
充実しながらも多忙な毎日を送っていることは想像にたやすいが、今回はそんな申さんならではの
タイムマネージメント術を中心に、ファンも多いシンプルで上品なファッションについても聞いた。
証券会社から今のベンチャー企業にシフトしたきっかけのひとつに、2016年に出版された『LIFE SHIFT』がある。
「書かれてある通りに、今は人生100年時代。それなら、私は80歳くらいまでは仕事をしていたい。ひとつのキャリアの延長線上で続けるよりも、大きく変えていったほうが長く幅広く仕事を楽しめそうかなと思いました。ちょうどそういう時期に今の会社の共同創業者との出会いがあり、一歩踏み出して4年になります。」
専属モデルを務める「VERY」でも、たびたび、申さんのロジックな考え方が取り上げられるが、ベンチャー企業の役員、母親、モデルをこなす日々のタイムマネージメント術も独特だ。「なるべく楽しいことに時間を割けるように無駄を省く」。そう聞くとよくある答えと思いがちだけれど、実践するエピソードは予想を超えて面白いものだ。
「子供の靴は、ファーストシューズを買うときだけお店に行ってサイズを測ってもらいました。そこから0.5センチ刻みで、すべて同じものを買って並べてあります。子供を連れて靴屋に行く、サイズを測る、成長と共に他のメーカーのいろんな靴でそれを繰り返す。それは子供も楽しくないし、私も無理だろうなと思って、12cmから17cmまで先に買いました。私にとっては不思議なことをしているつもりはないのですが、びっくりされることが多いですね(笑)」
仕事とプライベートの両立において欠かせない、夫婦間の家事分担も同じくユニーク。
「基本的に半分ずつという前提で分担しますが、例えば料理とゴミ出し、どちらが大変で時間がかかるかは曖昧ですよね。朝は一緒に着替えさせて食事をさせて、片付ける。そうすると家を出る時間が遅れてしまうことが続く時期があって、お互いに相手のせいだと思っていたんです(笑)。それで、実際に時間を測ろう! とタイムトライアルをしてみたところ、夫はお皿を洗うのにけっこう時間がかかることが判明。じゃあ、私はその間に保育園の準備と着替えをやる。そんな風に解決しました。それに長く一緒にいると相手がやってくれていることがだんだん見えなくなって感謝できなくなったりもするから、そういう意味でも整理ができてよかったです。」
細やかなタイムスケジュールはすべてGoogleカレンダーで共有して可視化している。
「夫とは、仕事、プライベート、2人の子供のそれぞれの予定もすべて同じ画面で見えるようにして、一目で相手の忙しさが分かるようにしています。出産後に職場復帰したときも、授乳したい時間をすべてカレンダーに入れて、よく打ち合わせをする職場の人たちには共有しましたよ。他の時間は大丈夫です、でもここだけは授乳させてくださいとお願いしました。スケジュールは聞かれなくても状況が分かるように可視化することを心がけています。」
ファッションについては着回しできることが大切で、なにを合わせても大丈夫なトップスとボトムが揃えてある。忙しい朝に、急に雨が降ってきて、足元だけが変わってもコーディネートが成り立つ。それは、いわばモジュールのようなものだとか。
「例えば、セオリーでは同じパンツを3本購入。そのうちの1本はサイズアップしたものを選び、座る時間が長い日に穿く。トレンドに関係なくいつも美しく穿けるパンツを持つということは人生のクウォリティを上げてくれると言えるかもしれません。そして、お金をかけるなら、特別な日だけではなく、日常的にオフィスでも公園でも着られるものにしたいです。靴を買うときも、100回履けそうだな、となると1日いくらかな?なんて考えて、なるべくしまい込まずにたくさん使うことが習慣になっていますね。」
仕事と母業、そして現在のもうひとつの軸である「VERY」モデルを務めることは、次世代に向けてのメッセージ。
「そろそろ3年目になります。私自身はそんな風に思っていませんでしたが、これまでVERYに出てきた人とはちょっと違うぞと捉えられていることが多いんですよ。私の生き方の良し悪しではなく、色んな人がいるということがメディアの中で見えて、女性の選択の幅が広がればいいなと思っています。」
Photograph_ Atsushi Kimura
Hair & Makeup_Tomoko Noda
Text_Kaori Watanabe<FW>