

LUXE Journal vol.7
大人が手に入れたい全てはここに。
セオリーリュクスと私の新しい関係
"年齢を重ねるにつれてますます魅力的"というのは、今を生きる女性の一番の理想形だろう。若い頃よりもずっと賢く、洗練され、人間味も増していく。人生の艱難辛苦を乗り越え、人としての優しさや温かみ、深さが出ること。女も"生きてきた証"が顔に出る時代だ。そんなお手本のような生き方を体現する女性がいる。今回「リュクス ジャーナル」にご登場いただいた大草直子さんである。「女性はもっと楽になっていい」とあらゆる角度から発信を続ける大草さんのファッション哲学、そして女性たちに伝えたいこととは。


肩書きも仕事内容もさまざま。
共通するのは"伝える"という使命
「私、自分からスタイリストと名乗ったことはないんですよ」と大草さん。出版社に所属する編集者としてキャリアをスタートし、独立後はスタイリストとしてはもちろん、雑誌の編集長やブランディングディレクターなどを歴任、多くのブランドとコラボレートした服作りや販売にも携わるなど仕事内容は多岐にわたる。そしてインスタライブやYouTubeなどSNSでの発信力の高さは群を抜き、幅広い世代の女性たちから厚い信頼を得ている。三人のお子さんを持つ母でもあり、自ら設立した会社の代表でもある。大草さんは肩書きを聞かれると「いつもモジモジしちゃう」と楽しそうに笑う。
「全ての仕事に共通しているのは"伝える"ということ。それはずっと変わらないですね。今日のように服を着させていただくお仕事なら、161cmで日本人体型をしている49歳の私が着るとどういう感じなのかを皆さんに伝えるのがひとつの仕事。私が編集長をしている『AMARC magazine』なら、また全然違うアプローチで読者へ"伝える"ミッションがある。プロセスは違うけれど、都心の道を行くか、高速道路で行くか、電車で行くかみたいな違いでしかないんです。今はそれらを複合的にやっているからこそ、それぞれの仕事の大変さがわかるし、細やかな気遣いもできる。女性たちへ伝えたい言葉も自分の中で広がっていると感じています」(大草さん)。


自らが経験してきたことを
独自の方法で"翻訳"する楽しさ
「"伝える"と同時に"翻訳する"ということもあります。今日のような仕事では"翻訳者"という意識もあるんです。どういうことかというと、セオリーリュクスというブランドが描く女性像、つまり "きちんとしているけれど、人を威圧しない、柔らかさと優しさがあって、知性がそこにある" そんな大人の女性の多面性を、服を通して"翻訳"しているんです。実際に着用した4つのスタイリングも、ブランドが描く女性像を体現していると思います。これがきちんと伝わるとすごく楽しいし、まさに自分の仕事だなって感じますね。服は普段から本当にたくさん買っていますし、いっぱい着ています。だから日々忙しい皆さんはそんなに試着しなくていいですよ、私が全部着てみますから!という気持ちです。私が"翻訳"してお伝えします、と」(大草さん)。
大草さんが語る"翻訳者"というポジションはファッションだけにとどまらず、ビューティや家電、宿泊施設や旅などあらゆるジャンルにその力量が発揮されている。だからこそ多くの企業から仕事のオファーが殺到するのだ。
「でもね、私好きなことしかやっていないんですよ。例えばビールは大好きだからお引き受けするけど、コーヒーは飲めないからやらないみたいに線引きがある。私の中でちゃんと引っかかりがあって言葉にすることができるか、翻訳する共通言語を持っているかどうかが重要だと思っています。ブランドの成り立ちや、対象としている世代や女性像、これからどんな風に進化していきたいのかなど、物語の背景を自分なりに深く理解しないと、絶対に皆さんに響く言葉には繋がらないと思っています」(大草さん)。



大人の魅力は多面性。
それを表現するブランドを選ぼう
アラフォー以降は若い頃に似合ったものが似合わなくなるという悩みを抱え、"おしゃれ迷子"になってしまう人も多い。大草さんにアドバイスを伺ってみた。
「若い頃に似合っていた服を40代、50代まで引きずっているのがそもそも違うのかなって。大人は大人向けに作られたブランドに、ガラッと視点を変えるのもよいと思います。大人向けに作られた服って、パターンも縫製も素材も全てが違うんですよ。今日の服もどこかにダーツが入っていたり、タックが入っていたりと、自然と婦人の体をきれいに見せてくれる作りになっています。そもそも目指している女性像が若いブランドとは違いますよね。
そして小物やアクセサリーも重要で、二段飛びぐらいの大胆さや遊び心で選んで大丈夫。シンプルな服であればあるほど重要になってくると思います。あと、髪型も大事ね。年齢を重ねると印象がモワッとしてしまうから、セミウエットにしてみるとか、ハーフアップにしてみるとか、どこかシャープさやモダンさを加えてみるといい。そうした新しい試みをミックスして楽しんでほしいですね」(大草さん)。
今年50代に突入する大草さん。10年後を見据えて考えていることがあるという。
「皆さん、ファッションに限らずいろんなことにすごく悩まれているんですよね。私は"女性がもっと楽になればいいな"ということを最終的な目標として仕事をしているのですが、女性学や身体心理学などを改めて学びたいと思っているんです。更年期のことも含め、ファッションもビューティももっと深く掘り下げたい。特に女性のファッションってデータや数字がないので、印象と感覚でしか語れないところがあるんですが、エビデンスを裏付けてファッションを語れたら、皆さんもっとストンと素直に納得できるんじゃないかなって思っています。もっと伝わる言葉で語れるようになりたいですね」(大草さん)。


※クレジットの記載がないアイテムは全てご本人の私物です。
Model&Stylist/Naoko Okusa
Photographer/YOSHIYUKI NAGATOMO
Hair&Make/EIKO SATO(ilumini.)
Editor&Writer/ASAMI TSUBOTA